裁判員がストレス障害

 新聞報道によると福島地裁郡山支部で裁判員をつとめた方が、証拠調べでみた遺体のカラー画像などが原因で不眠症や食欲不振に陥り、「急性ストレス障害」と診断されたそうです。
 この方は、慰謝料の支払を求めて国家賠償請求訴訟を提起するとのことです。

 私が司法修習生として、東京地方裁判所刑事13部で、刑事裁判修習をした際、同じ部で一緒に修習をしていた女性の修習生が、強姦事件の記録をよんだ際、手が震えるなどと言っていたことがありました。もちろん、その修習生は、法曹のタマゴですから、みずから望んで記録を読んでいる訳ですが、それでもかなりの精神的負担を受けたようです。

 一般の方は、死体の写真や強姦の被害者の写真などを見たいと希望しているのでしょうか。

 裁判員裁判により、司法が国民に身近になったかどうかは分かりませんが、裁判員裁判の対象事件を何にするかは、今後、真剣に考えていかなければならない問題だと思います。
 
 私は、重大事件は法曹にまかせて、身近な事件、たとえば、チカンとか窃盗などの事件を、1人(単独)の裁判官と裁判員2人の3人で合議体を組んで審理するとか、勾留請求の際に、逃亡や罪障隠滅のおそれがあるかについて、国民の代表として意見を述べるなどの方法による関与のほうがいいのではないかと考えています。

 特に、何でもかんでも逮捕して、勾留請求をして、20日以上身柄が拘束される今の日本の人質司法は、ぜひ、国民の方の常識を導入することで劇的にかえていかなければならないと考えます。
 餅は餅屋といいますが、司法手続においても、国民自らが主体的にかかわる部分と、一部の専門家にゆだねる部分があって当然と考えます。
 
 今後の裁判員制度の見直しを含む国民の司法参加の議論には、ぜひ、関心をもって頂きたいと思います。